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【2023年7月25日】学び舎ゆめの森の先生向け建築見学会レポート

はじめに

学び舎ゆめの森について

皆さまこんにちは!
2023年、福島県大熊町大川原地区に開校する大熊町立学び舎ゆめの森の設計チーム「アーキシップスタジオ・鈴木弘人大熊町教育施設設計業務共同企業体」メンバーの塚本です。
「アーキシップスタジオ・鈴木弘人大熊町教育施設設計業務共同企業体」は、2020年9月にプロポーザルで選定頂き、大熊町と共に議論を進めながら2021年10月までに基本設計・実施設計を完了しました。
2021年12月末に着工してからも大熊町や施工者である大成建設と様々な議論を重ね、2023年7月10日に無事引き渡しセレモニーを完了しました。8月末からの供用開始に向け、現在は引っ越し作業が進んでいます。

訪れた目的と記事の概要

今回学び舎ゆめの森のデザイナーの皆さんに向けての見学会として、完成後の新校舎の中を初めて体感してもらう機会となりました。今年の4月からは既に町内の施設を使用して大熊町での活動を開始している学び舎ゆめの森ですが、この春に着任された皆さんともお会いすることができ、これから学校の運用が始まる実感がよりリアルになってきました。

今回2学期からの運用開始を前に設計者の思いや、設計の意図を伝えることで、実際の場所の使い方や想定していることを共有し、これからここでどんな学びの可能性を拓くことができるのかデザイナーの皆さん一人ひとりに想像を膨らませてもらう機会となりました。

会が始まる前に校舎の周りをぐるぐる見て歩きました!
この日は猛暑日でとても暑かったです。

期待溢れる校舎

校舎中央の図書ひろばに集まる

デザイナーの皆さんと設計チーム(アーキシップスタジオ・鈴木弘人大熊町教育施設設計業務共同企業体)、設計の際に様々な角度で助言をいただいた教育環境研究所など、様々なメンバーが一堂に集まりひろばの形に合わせて自然と輪になって会がスタートしました!

進行役は設計期間中から濃密な議論を繰り返してきた増子GM(副校長)です。

【設計チームの紹介をする様子】
増子GM(左)、アーキシップスタジオ・飯田(中左)
アーキシップスタジオ・渡邉(中右)、鈴木弘人設計事務所・鈴木(右)

最初にデザイナーの皆さんに向けてこの学校の設計に取り組む中でこれまでどのような話し合いや検討を経てこのような校舎に至ったのか、設計者より説明しました。

設計の当初は四角い教室を並べるようなよくある学校らしさが残っている計画だったが、大熊町の教育委員会から「これまでの普通の教室ではない環境を求めている」という意見をもらい、プロポーザルで選定された後に再度検討を行う中で、建物の骨格を四角いグリッドから三角形のグリッドに変更した。そのことによって場所が自由に設定できて、いろんな中心が生まれる空間を発見した。そこからようやく学び舎ゆめの森の設計が本格的にスタートし、0〜15歳の子どもたちだけでなく色んなものが混じり合う空間を目指した。(アーキシップスタジオ・飯田)

個々の部屋単位ではなく、「エリア」という大括りのまとまりに個性を持たせていることがゆめの森の特徴だと思う。
ドキドキアトリエやさんさんアリーナなど、エリアの名前は子どもたちとデザイナーの皆さんと行ったワークショップで決まった。教科ごとに学ぶのではなくエリアのまとまりを利用して色々な教科がコラボレーションする学びの在り方を期待している。
各エリアは必ずそのエリアに関連した本が配架されているのも大事なポイント。
例えばにこにこサポータールーム(職員室)は主な執務室となる閉じた場所と、子どもたちやデザイナー同士がコミュニケーションがとりやすいように開かれた場所の両方があり、教育活動を行う中で参考になる本が近くに置かれている。またデザイナー向けの本に興味をもった子どもたちがその本を読むなど新しい本と出会えるきっかけにもなれば良いと思っている。
(アーキシップスタジオ・渡邉)

初めての校舎に期待と興奮!

デザイナーの皆さんからも実際に足を踏み入れた第一印象を話してもらいました。
「どこを回っても迷路みたい」
「ワクワクする。色んな可能性が詰まっている学校!」と期待と興奮に溢れるコメントをいただきました。

先生たちの反応 - 校舎をぐるぐる歩く

施設内の異なる学習エリアの紹介

増子GMからの提案でまずは30分くらいの時間を設けて各々が校舎を歩いてみました。校舎はかなり広いのと見所がたくさんのあるのでかなり駆け足でしたが設計チームとデザイナーの皆さんでなんとなくグループに分かれて歩き回ってみます。

いきなりごちゃ混ぜ!
掲示壁に設けられているサイン

「これはなんだろう?…やわらかい!」
見慣れないオブジェのようですが、学び舎ゆめの森のサイン計画の一つです。ウレタンの素材でできた柔らかいオブジェのようなもので、エリアの名前と書架の分類が書かれていて、エリアの外形がそのまま形になっています。

サイエンスラボから屋外テラスを見る

デザイナーの皆さんの反応が良かった、2階にあるふむふむ研究所の中のサイエンスラボ。なんと外のテラスと繋がっていて、野外活動と連続してそのまま実験したり観察できるようになっています!

会の冒頭で紹介したにこにこサポータールームを案内。
しっかり室内が図書ひろばから見えるようになっていて安心感があります。

親しみのある雰囲気!

養生で見えにくいですが、カフェでお茶するみたいな感じで気軽に話せる雰囲気のカウンターです◎

「今が一番楽しい!」

書架を配架中の山口先生にヒアリング

ぐるぐる校舎を見学する途中でブックソムリエ(学校司書)の山口デザイナーにもお会いしお話を伺いました。
新しい学校に本をどのように入れるか、並べ方の工夫や検討をすることはとても楽しい!と、大変な作業でも楽しんで進められている姿が印象的でした。
確かに新しい施設に書架を並べる計画をする機会はなかなかない事ですよね。部分的に本が並んでいる書架もあり、空間がより生き生きしてくる様子が伝わってきます。

棚に合わせて綺麗に並べたり、表紙を見せるように並べるなど
細かな検討が必要そうです・・!
約5万冊の本が収容される学び舎ゆめの森

後日振り返り

後日所内で今回の会の感想を話し合いました。

学び舎ゆめの森の主担当を務める渡邊

デザイナーの皆さんのポジティブな反応が嬉しかった

デザイナーの皆さんのポジティブな反応が多くて、それが嬉しかった。
校舎の中央のわくわく本の広場で、すり鉢を使いながら演劇をやるかもっていう話も聞いていて、使い手の想像力が掻き立てられる空間になっていくと良いなと思っている。
きっと普段からデザイナー同士で「普通の学校とは違うんだ」ということについて一緒に考えたり、コミュニケーションが取れているんだろうなと感じる。うまく言葉にできない事がワクワクの根源にあって、それにチャレンジしていこう、やってみよう、という前向きな気持ちが伝わってきて設計者としても嬉しい。(渡邊)

二項対立的ではない、中間のまとまりをつくる

すり鉢の裏や表、サザエ堂などのビックファニチャー(建築と家具の間のような大きな家具)の存在や、外壁や建具も家具として扱うことで構造から自由になる構成がごちゃ混ぜの教育環境でうまく働いていくと良いなと思う。
それらの家具によって室内外が自然に繋がるバッファーのようになっていて、デザイナーの皆さんが反応してくれた「外にも教室がある」という環境だったり、サインのワークショップがきっかけで決まった<エリアに名前をつける>事と相互作用して、色々な中心がある構成に繋がっていったと思う。
その事を経験して思うのは場所を分けたり、区切ることの意味がそこまで強くない事を実感したし、二項対立的ではない、中間のまとまりを作ることが大事なんだと思う。(渡邊)

仕上がれば仕上がるほど豊かになる

建築の設計をしていて、建方(木造や鉄骨などで、土台、柱、梁や小屋材などの主要な構造材を現場で組み立てること。上棟時)の時が一番美しいと感じることがよくあるけれど、ゆめの森では家具とか物が入ってきて、人が使い始めた時にどんどん生き生きした状態になるのだと思う。
<仕上がれば仕上がるほど良くなる>、<使われれば使われるほど面白くなっていく>っていう感覚を大事にしたいと考えているので、仕上げや家具はラフさが残っていた方がいいと思っている。(渡邊)

渡邊に話を聞くと上記のような言葉が返ってきました。
ゆめの森の設計〜竣工までを経て、私自身そのプロセスになかなか言葉を与えるのが難しかったのですが、これまでの様々な設計のプロセスや活動がクリアに捉えられるような感覚で話を聞いていました。
設計する中で色々な気づきや実感を経て、目指していくものが形になっていく建築の楽しさや自由さを知る機会になったと思います。
また同様にこれはこれからの学校の教育・学びの環境にも必要とされる事なのでは?と強く実感しています。
引き続き色々な議論ができる機会が今後も続いていくと嬉しいです。

学び舎ゆめの森の見学会を開催します!

日時や場所などの詳細は下記の記事からご覧ください。
皆様にお越しいただけるのをお待ちしております!



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