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ゆめの森演劇「きおくの森」〜本番の様子〜
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開演直前の様子です。全員に用意された特別な衣装に身を包み化粧を終え、最後の円陣を組みます。ゆめの森演劇WSでは恒例となった、全員で手をつないでパワーをまわし増幅させていくスペシャル円陣です。関口さんの伴奏の元、最後の歌の練習も終わりました。
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すでに客席にはお客さんが入っています。
いつも一緒のデザイナーと一緒に衣装の最終チェックを行い、デザイナーや友達とパワーを分け合っていざ舞台袖へと向かいました。
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客席には、観劇に来てくださった200人にも及ぶお客様がずらり。
関口さん、蟹江杏さん、アトリエANZの皆さん、音響の和田さんを初めとするスペシャルサポーターも配置につき、いよいよ劇の幕が上がりました。
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劇本番の写真と共に、それぞれの場面のセリフや動きを簡単にお伝えします。
ご観劇くださった皆様は本番を思い出しながら、初めて演劇「きおくの森」にふれる方は舞台の様子を想像しながらお読みください。
〔舞台上、奇怪な旅人の群が現れる。〕
「山のあなたの空遠く、『幸い』住むと人の言う。」
「ねえ、どこまでいくんだよ~」
「どこまでも。道が続いていく限り。」
「過去、現在、未来」「過去、現在、未来」
「このカゴの鳥のように、いつの間にかすうっと消えてしまうのです。」
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♫「青い鳥 小鳥 なぜなぜ青い 青い実を食べた」
「青い女の子だ!」
「見て、夕闇と海の間の空の色。」
「日隠山の向こうに日が落ちて、悲しい風が吹いてきた。」
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〔白い妖精達が土を削って、中央の白い袋に何かを集めている〕
「土を削って ふるいにかけて、集めなきゃ」
「みて、微笑みのかけら」「ここには、赤ちゃんがいたんだね。」
「涙の粒だ」「でも変だな、土に染み込んだ涙の粒は、角が取れて丸くなる」「きっと、まだ泣いているんだね…」
〔辺りに雨が降り出し、色とりどりの傘を持った通行人。
傘の大群の中、手向けの花を持つ黒い服の男がくうをを見つめている。〕
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♫「地図にはねえ 世界へと 力の限り かっくらせ んださ 俺たち くまわらし」
「おめえらの話には夢がねえや、少年よ、大志を抱け。だ!」
「甘いね。チンケな大人が支配するこの現代社会で大志を抱けとは、どだい無理な注文なのだよ。」
「やいおめいら!馬の背からやってきたこの風は、どこさいぐ?」
「俺はな、この風の行き先、日隠山の向こうを見てみてえ」
「でっぷしセンセイの真似だっぺした!」
「諸君、空を掻っ切る飛行機に乗って、山の向こうに出発じゃ!」
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〔虫取り網を携えた少年が、虫取りに夢中になっている〕
「この子達をいじめないで!」
「べ、別にいじめてなんかいないよ。その…調べようと思ったんだ。」
「何でも知っているのに、蝶の心は分からないのね」
「感じる?種子の息吹、星の鼓動、それから、染み込んだ傷の痛み。」
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〔黒い服の男(過去の男)が表れ、青い少女の姿が消える。〕
「そこん角には昔時計屋があった。その向かいには本屋。んで、むこっかわにはパン屋があった。」
「おれ、怖いんだよ。ここに何があったのか忘れっちまうのが。俺にも宝って言えるもんがあったんだ。でもだいぶ前に海でなくしちまった。それっきりさ。すべて忘れてしまいそうで…俺はこえんだよ。」
〔黒い不気味な三人の影。世界征服を企む三羽鴉。〕
「臥薪嘗胆。時ぞ来たれり。今こそこの世界を我が鴉界の手中に。」
「鴉でも白黒つけることはできんだっぺか?そもそも、白ってどんな色?」
「もっとやれ!もっと、もっとやれ!」
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〔二羽の鴉を闇討ちする中央の鴉〕
「黒い鴉は、もう流行らぬ。人間には人間のやり口を。人間どもをたぶらかし、我が漆黒の世界へ導いてやろうぞ。かかかかかか。」
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〔旅人たちが闇の中から登場〕
「丑寅の刻に森に迷い込んだ、馬とかば」
「道標として落としておいたパン屑を辿ればもしや。」
「だめだよ!パン屑はおいらの腹の中だもの!」
「おおごとじゃ!何やら風が生臭い。」
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〔一閃、雷鳴が鳴り響き、壁を突き破って子ども達が乱入する。子ども革命が開始されたのだ。〕
「この会場は、我々が占拠した!」
「やい、貴様達!困ったことがあれば右往左往!」「そのくせ偉そうな事ばかり言いやがって!」
〔甘い言葉で子ども達を誑かそうとする鴉、返り討ちにあう〕
「放埒放恣は真の自由にあらず。自主自立こそ我らが自由なり!」
「我々はここに、子ども共和国設立を宣言する!」
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〔児童一同が舞台に集合、リーダーの声に快哉を叫ぶ〕
♫「大人なんて大嫌い 嘘をついてばっかり (そーだ!そーだ!)
たばこすってお酒のんでスマホ見たら寝るだけ(大嫌い!大嫌い!)」
♫「みんなよく聞けよ 俺たちこそ正義だ みんなよく聞けよ 俺たちこそ正義だ」
「自由と正義の旗を高く掲げよ!」
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〔過去の男の横を、椅子を引きずった不気味な黒い三人が歩いて行く。〕
「いろ、色を無くしちまったんだ。」
「ねえ、教えてよ。僕は、これからどうすればいいの?」
「四方を壁に囲まれて、闇の中で息を潜めて生きるんだ。」
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〔絶望に打ちひしがれる少年の前に、青い少女が現れる〕
「大丈夫。そおっと息を吸い込んで。目を閉じて見てごらん。耳を塞いで聞いてごらん。」
「あんなに確かにあるものが まだここから見えないだけ。」
「怖くない。壁の向こうも、みんな同じ。」
〔児童達が現れ、歌いながら楽しげに遊んでいく。〕
「空と海が交わるあたりで生まれた風は、何色になるのだろう。風の色で、絵を描いてみたい…」
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〔くまわらし達の帰還。母と喧嘩別れをしたことを後悔して涙を流す。〕
「疲れた!もう歩けねえ…」「だからやめようって言ったっぺ!」
「しょーもねえことしゃべぐっな!しっぱたぐぞ!」
「おら、昨日おっかあとくぢもみしっぺしたあ。『おめーなんておめんたぐね!』って言われただ。」「おっかあ!」「おっかあ」
〔子ども達を探す母の声。心配かけた子ども達に怒り心頭の様子。〕
「こだどこで油売って!夢だけじゃかんにぇど。まんま食うためにゃ、働かにゃ。ほら、ええさけえっぺ。おごっそ作ってやっから。」
「栗まんま!こりゃあこでらんにぇ」
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♫「栗をひろう そのたびに うかぶ笑顔 お父さん
栗をひろう そのたびに うかぶ笑顔 お母さん
喜んでくれるかな 待っていてくれるかな
本当はとげの傷 痛むけど内緒だよ」
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〔雪が降る中、旅人達が提灯を手に歩いている。〕
「日本の小さな村々に 人々が 小さな小さな喜びを追っかけて生きている
ああ、うつくし」
「見える。いろ、いろ、色。ここにもほら。小さな小さな喜びを追いかけて、
ほらここにも。ある。ある。確かにある。」
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〔青い少女と遊ぶ少年〕
「冬から春に変わるんじゃなくて、冬と春は同じものなの。
春は冬の喜んだ姿。春は冬の笑顔!」
「僕とおんなじだ。冬があるから、厳しい冬があるからね。だからね、春は美しい。」
「みて、おでこに光をくっつけて、ゆめの種が風に乗って飛んで行く!」
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「とんでいこうよ どこまでも たくさんのこんにちはに であうために」
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〔白幕が開かれ、子ども達は船出の準備をしている〕
「一人一人の大切な物語が集まる場所。それが僕たちのふるさと。
僕たちの思い出が、ふるさとを作るんだ!」
「さあ、おめいも、乗れ!さーはやぐ!」
「君は乗らないの?」「うん。夕暮れが近いもの。」
「…ありがとう。」
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「深い緑に分け入って 七色の風を帆に受けて」
「ゆめの森号 出発!」
〔青い少女の傍らに、過去の男が座る〕
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「日隠山に日が落ちた」
「優しい風が吹いてきた…やっと会えたな」
「いつでも会えるよ。私、どこにだっているんだもん。
みんなの思い出の中で、あたし、100万年もの時を生きるんだわ…」
〔天から青い羽がひらひらと落ちてくる。曲も静かに〕
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「過去の男」役こと本校マネージャーの小澤が児童の手を取り、カーテンコールです。
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長かった緊張から解放された様子のみんな。
喜びでいっぱい、というよりもむしろ安心した表情でご挨拶をしていました。客席に家族の顔を見つけてにこっと笑う児童も。
裏方を支えたデザイナー達も合流し、今回の演劇の歌をみんなで合唱しました。
♫「まだ見ぬ明日 豊かにする はじまりの木 願い込める
ずっと ずっと 伸びるように
ずっと ずっと 実をつけますようにと
たねをまこう 未来めざし 枝を広げ 過去の日々に 根を伸ばして
つながりゆく 命よ
たねをまこう 未来めざし 枝を広げ 過去の日々に 根を伸ばして
つながりゆく 私達よ」
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出演者・サポーター全員で「ありがとうございました!」と大きな声で御礼。子ども達は客席に手を振り、舞台を後に。
演劇「きおくの森」はこれにて完全に幕を閉じました。
演劇「きおくの森」
脚本・演出:木村 準
音楽:関口 直仁
カブリモノオブジェ:ニシハラノリオ
舞台美術:蟹江 杏
終演後はみんなで肩を抱き合い、お互いのがんばりをたたえ合いました。
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小さな身一つで、200名ものお客さんの前で役を演じるのはどれだけ緊張したことでしょうか。
午前のゲネプロで本番通りに通した彼らだからこそ知る大きな恐怖や不安がありました。
それでも、同じシーンのメンバーを、一緒に演劇を作り上げるみんなを、そしてこれまで頑張ってきた自分を信じ60分の劇を演じきりました。
お帰りになられるお客さんの表情を見れば、今回の演劇が大成功だったことは間違いありません。皆さん、本当に本当にお疲れさまでした!
今回の演劇は、ご協力下さった皆様、足をお運び下さった皆様、応援して下さった皆様のおかげで無事幕を閉じることができました。誠にありがとうございました!
ゆめの森の演劇はこれからも続いていきます。今後とも皆様の暖かな応援を賜ることができましたら幸いです。ゆめの森新作公演をお楽しみにお待ちください!
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