【日々の記録】友達と他人のはざま
皆さん、こんにちは。
会津を離れる際、7名に過ぎなかったゆめの森児童生徒は、大熊で新入、転入を迎え、2年目の今年度34名になりました。なんと約5倍です。
2024年。新学期が始まり早1ヶ月以上。
児童生徒は大過なく概ね楽しく過ごせていますが、よくよく目を凝らしてみれば、子供同士、小さな人間関係の中でも、やや固定化が進んでいるようにも見えます。
むろん、全員が「仲良しこよし」になる必要はありません。ですが、全員が同じ学び舎で学ぶ「仲間」であることは動かしようのない事実です。
同じ仲間なら、全員が互いに気持ちよく過ごせることに越したことはありません。
では、どうしたら「互いが気持ちよく」過ごすことができるのでしょうか。
3時間目。
5年生から8年生までが本の広場に集合です。
ヘルスデザイナー(DE&Iコーディネーター)の大水さんとスクールカウンセラー佐々木さんによる「心の授業」の始まりです。
まず大水デザイナーが話します。
「今日は、どうしたらみんなが気持ちよく過ごせるのかゲームを通して考えましょう。まず最初は『じゃんけん』です。」
え?じゃんけん?
正直、虚をつかれた心境です。
「では、まずロールプレイをしてもらいましょう。それでは・・」
私の心境を見抜いてか、大水さんが私を指名します。
ルールはこうです。利き手でじゃんけんし、反対側の手で自分が勝った回数を数える。それだけです。
早速佐々木さんと私でやってみます。
「じゃんけんぽん!」
・・回数を重ねるうちに勝利回数を示す左手がおろそかになります。そちらに気を向けると、今度は途端にじゃんけんのタイミングが合わなくなります。
ん、なかなか難しいぞ・・。
ロールプレイの後、佐々木さんから説明があります。
「上手くじゃんけんするためには、相手と呼吸を合わせる必要があります。そのためには視線を合わせることや、相手のリズムを感じ取り互いに寄り添うことが重要です。」
なるほど。独りよがりではスムーズにいきません。
シンプルなゲームの中に、多くの示唆が含まれています。
今度はペアを作ってみんなで実践です。
「せーの、じゃんけんぽん!」
呼吸が合い、リズム良く進むペアがいます。また、互いに声が出なかったり、テンポが合わなかったりでゲームが続かないペアもいます。
佐々木さんが話します。
「じゃんけんに勝つことがポイントではありません。また、スムーズにできないことが悪いことでもありません。相手の呼吸を感じ、この活動を通して一人ひとりが「気付き」を得ることが大切なんですよ。」
・・徒然に思考が漂い始めます。
ある程度歳を経てから私は「空気を読む」ことが上手になりました。
「相手のために」忖度し、韜晦(とうかい)し、相手の機嫌を損ねまいと、無駄に気を働かせることがしばしばあります。
・・しかし、それは「互いが気持ちよく過ごす」と言えるだろうか。また、相手の話も聞かぬうちに「相手のため」を勝手に思うことは僭越ではあるまいか・・。
私がぼんやりしているうちに次の活動です。
今度は「サイコロトーク」です。
サイコロの目が示すトークテーマについて互いに語り合うワークです。
お昼の番組でお馴染みのあのゲームと言えばわかりやすいでしょう。
再び佐々木さんがルールを説明します。
「ただのおしゃべりじゃもったいない。次のことを意識してやってみましょう。」
モニターに言葉が映されます。
①あたたかい言葉を使う
②あたたかい言葉の伝え方を工夫する(表情・声のトーンなど)
③周りの人の気持ちを感じる(同情ではなく共感)
以上のことを意識してサイコロトークスタートです。
全体的に賑やかに楽しく活動は続いていますが、どこかにぎこちなさは残ります。
ツルツルとテレビ番組のように円滑にはまわりません。羞恥心と言おうか、気後れと言おうか彼らなりの「自意識の萌芽」のようなものが見られゴツゴツした印象です。
そんな様子を眺めながら、再び思考が漂います。
・・・これでいいんだよな。
青くて荒削りで武骨で、ゴツゴツしている。これが今の彼らの魅力なんだよな。
忖度し、韜晦(とうかい)するおべっか使いよりいいんじゃないか、と。
また、同時に思います。
でも、どこまでも我流を押し通せるほど世間は甘くはない。ある程度相手に合わせる術を持たなければ自身が苦しくなるばかりだ、と・・・。
放課後、スクールカウンセラー佐々木さんと話します。
「自分が発した『あたたかい言葉』は、必ず自分に返ってくるんですよね。良好な関係を築くためには『あたたかさ』を発信することと同時に人の『あたたかさ』をきちんと受け取ることが重要なんですよ。いわば『あたたかさ』のキャッチボールですね。
もちろん全員が友達にならなくてもいいんですよ。ただ良好なあたたかい人間関係が築ければ、相手も自分も気持ちよく過ごすことができるんですよね。」
良好な人間関係には、相手のために自分をすり減らすような気遣いは必要ありません。かといってどこまでも天然自然の野生児のままでは支障があるでしょう。
自然体でいいのだけれど、少し「あたたかさ」を意識するだけで、関係性の弾力が俄然と変わってきます。
繰り返しになりますが、必ずしも全員と「仲良しこよし」の友達になる必要はないのです。
「友達100人できるかな」
無邪気に歌ったあの歌・・。
今、あなたには友達100人いますかと問われれば、即座にNOと答えます。
しかし友達と赤の他人の間に、100人以上の人間がいるかもしれません。
今、日常を見渡せば生活のほとんどは「友達と他人のはざま」の人間との関係性で成り立っています。
「友達じゃないから・・。」ではありません。
「友達の外」にある関係性を良好に保つことこそ、毎日お互いがご機嫌に過ごせる秘訣なのかもしれません。