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【日々の記録】まだ見ぬ色

皆さん、こんにちは。
以前ある新聞に、フィンランド北部のロバニエミ高校の授業の様子が紹介されていました。

ある日の国語の授業で、小グループに分かれて、目をつぶるように言われました。
そして先生は、「『白』という言葉は何色をしていると思う?よくイメージを膨らませてみて」と問いかけたのです。私は困ってしまいました。
 ところがほかの生徒たちは驚いた様子もなく、真剣な表情で「もも色」「薄茶色」などと答えたのです。白を白い色と決め込まずに、言葉の持つ響きが頭の中に浮かび上がらせる色を、ただひたすらに想像していたのでした。

朝日新聞コラムより

白って白くないの?
この問いは、私たちゆめの森にはまだ難易度が高いかもしれません。
しかし、もう少し抽象度を落として「笑顔」って何色?「悲しみ」って何色と問えば、あら不思議。まさに十人十色。児童生徒だけではなく読者の皆さんの頭の中にも色々な「いろ」が浮かんでくるかもしれません。
では、「幸せ」は何色なのでしょう?

幸せの色を染色といった方法で探求する先人がいます。
浪江にあるO CAFEの店主、岡洋子さんです。岡さんは震災後、解体することとなった自宅倉庫を「O CAFE」へと改修し、浪江町で様々な方々が“ただいま”と帰れる場所づくりに取組んでいらっしゃいます。
岡さんの多岐にわたる活動の中に「染色」があります。
避難先から浪江に戻った際、「故郷に色がない」と感じたことがきっかけとなり、天然自然の中から様々な色を抽出し、染色に生かしているのだそう。

先週のこと。3年生から6年生で組織されたゆめの森探検隊は、その秘技を学ぶため一日入門しました。
さて、彼らはどんな色を染め上げたのでしょう。

o cafe前で岡洋子さんと「初めまして。」
洗濯バサミでつまむと・・。
ほら、こんな模様!

こんにちは。今日はよろしくお願いします。
田園風景に囲まれたO CAFEで岡さんと対面します。
「皆さん、ようこそ。今日はたくさん発見を持ち帰ってください。」
にこやかに岡さんが私たちを出迎えてくれます。
岡さんの丁寧な指導のもと、早速染色に挑戦です。
一枚の綺麗な染め物を手に、岡さんが話します。
「ほら、これに模様があるでしょう。これはね、ゴムを巻いたり、洗濯バサミで挟んだり、折り畳んだ部分を紐で括ったりしてつけました。どんな模様になるか、みんなも色々と実験してみて。」
ひとり一枚白いハンカチが手渡されます。
それそれがゴムやビー玉巻きつけ、試行錯誤しています。

どんな模様になるのか想像もつかん!

「準備ができたら、この鍋に入れてください。」
鍋の中では農茶の液体が湯気を上げています。児童たちは顔を寄せて鍋の中を覗き込み、「なんかおでん作るみたい。」「スープの匂いだよ。」と盛んに論評を加えています。
「これはね、浪江で取れた玉ねぎ。玉ねぎの皮を煮て色を作るの。」と岡さん。
え?玉ねぎの皮?いつもは捨ててしまう食材が、染色の材料になるなんて!一同ビックリです。
さあ、玉ねぎの皮からどんな色が生まれるのでしょう?

焼き豚みたいだねー。
違うよ!おでんだよ!
だから、焼き豚ちゃうわ!

一言に「染め物」といっても、その工程は複雑です。染料を煮出して染液を作り、熱を加えて染色し、色の定着を図るため媒染し、粗熱をとり水洗い。
この工程を見よう見まねで全ての児童が体験します。
熱々の媒染用のお鍋からハンカチを引っ張り出して、流水で濯ぐと・・。
「おお!」「わあ!」
あちらこちらから歓喜驚嘆の声が漏れます。
白いハンカチは、柔らかい黄色に染まっています。
「薄汚れた玉ねぎの皮から、こんな優しい色が生まれるなんて・・。」
さざなみのように感動が襲います。
どの作品も世界に一つ。模様も色も、二度と同じものを作ることは叶いません。
まさに色との一期一会です。
「ねえ、『幸せの黄色いハンカチ』みたいでしょう?」と岡さん。
鋭さのない、柔らかい暖色が「幸せ」を連想させるのかもしれません。

みて、幸せの色!

「自然の中にはたくさんの色が眠っています。今見えている色が全部じゃない。思いがけないものから、思いがけず美しい色が出てくることもある。
また、なんか試したくなったら、いつでも遊びに来てくださいね。」
柔らかい岡さんの笑顔に見送られ、柔らかい色に染まったハンカチを懐に、私たちは浪江の里を後にしました。

さて、来週の土曜日はスポーツフェスティバルです。
今年のテーマは「つながりとひろがり」。皆さんと競技を通じてゆめの種を育て、グラウンドに「大きな花を咲かせよう」というのが今フェスティバルのストーリーです。
私たちが互いに手を携えて、天に向かって咲かせる花は、何色になるのでしょう。
まだ見えぬ「いろ」を夢想し、思わず微笑んでしまいます。

1・2年生のCMです。6月1日のスポーツフェスティバルが楽しみです。