【日々の記録】種を蒔き、種に祈る
皆さん、こんにちは。
日に日に秋も深まってまいりました。一歩外に出れば、紅葉、松ぼっくり、どんぐりにススキ。今日も児童たちが色々な秋の断片を学校に持ち帰ってきました。
「ねえ、みて。僕より大きなススキだよ。」
2メートルに届きそうなススキを手に、自慢げです。
「これかわいいでしょう?あげようか?」
千日紅(センニチコウ)の小さな花束を手に、2年生が優しい言葉をかけてくれます。
「それ、どうするの?」と尋ねると、教室に飾るとのこと。
あとで見にいくと、植物図鑑の本棚の上に無造作に並べてありました。私の目には「無造作」ですが、おそらくそれも彼らなりのデコレーションなのでしょう。
今日も素敵に想像を超えてゆくゆめの森なのでした。
本日はネイチャーラボでの「野菜チーム」の活動をご紹介いたします。
今日は、いよいよ種植えです。先日苗作り、土作りに必要なものを自分たちで買ってきました。でも、大人の私も含めて、野菜作りは初めてです。種の袋や、土の袋に書いてある注意書きを読みながら、試行錯誤の始まりです。
先にサニーレタスの苗作りの準備をします。苗用ポットにみんなで土を入れていきます。
「なんだか、ご飯をよそっているみたい。」
「土のカップケーキだよ。」
楽しくなって先を競うように土を入れていきます。土をご飯に見立てたせいか、中にはぎゅうぎゅうに土を詰める児童もいます。ここでデザイナーが質問します。
「もしみんなが野菜の種だったら、どんなお布団で寝たい?」
「えー、ふかふかのお布団!」
ここでハッと気付く児童たち。
「そうだよ、こんなにぎゅうぎゅうにしたら、固くて芽が出ないよ!」
慌てて、ぎゅうぎゅうのポットを、ふかふかポットに直していきます。よし、これで大丈夫。
苗ポットの次は、ほうれん草です。ほうれん草のタネ袋の注意書きをじっとみていた7年生が唐突に叫びます。
「ほうれん草は直まきって書いてある!畑に直接蒔いていいんだ!」
苗ポットに植えるつもりでいた他の児童もびっくりです。
「え?じゃあ、このままバラバラとまいたらいいの?」
とはいうものの、タネ袋を手に、じっと畑を見つめ動かない児童たち。目の前のまだ固そうな土の前に、確信が持てないでいるようです。
「黒石灰を混ぜろって書いてある!」
またまた7年生が叫びます。ああ、買ってきたあれを混ぜるんだな!みんな納得顔で黒石灰の袋を見つめます。早速開封しみんなで黒石灰をまいていきます。
「鬼は外!福はうち!」「福は外!鬼はうち!」「お前、不幸になっちまうぞ!」
口々に叫びながらみんなで黒石灰をばら撒いていきます。
「これは、映えるわ〜」
一心に黒石灰を撒くみんなから離れ、一人の児童はその様子を写真に撮っています。
「おい!オメーも手伝えよ!」
なんだかんだ楽しそうです。
黒石灰を畑に撒いて、なんとなく沈黙します。まだ固そうな畑をみんな見ています。まだ種を蒔く確信が持てない様子です。
「これ撒くだけじゃなくてさ、土とよく混ぜたほうがいいんじゃない?」
7年生の発言に納得顔の児童たち。かけって用具倉庫に道具を取りに行きます。
「こんなんみっけたぜ!」
クワ、備中グワなどを手に息を弾ませ、戻ってきました。
そおれ、ホイホイ。口々に言いながら、クワを振るう児童たち。しかし、くわは土の表面をジャリジャリかすりとっていくだけで、うまく混ざりません。クワを持つ手つきも、腰もグラグラで、農家の方がご覧になったら卒倒しそうな光景です。見かねて他のデザイナーが口を挟みます。
「もっとほら腰を入れてごらん。下の土と上の土をひっくり返す勢いでやってご覧よ。」
「こうかな?ホイホイ。」まだまだおぼつかない手つきですが、自分たちで試行錯誤していきます。うんうん、一心にクワを振るっているうちにだんだん様になってきました。
一年生も、「腰が痛いよ。おばあちゃんになっちゃいそう。」とぼやきながらも、クワを離そうとしません。多少しんどくても、土が彼らの野生を呼び覚ましたのようです。黙々と土に向かっていきます。改めて、土の持つ力に気付かされました。
土を耕し、整地して、畝をうなって、ようやく畑が本物らしくなりました。
みんなで作った畑に、丁寧に丁寧にほうれん草の種を埋めていきます。その畝は君が。この畝は私が。・・それぞれ自然に決まった自分の畝に種を埋め、優しく土を被せます。「種をまこう〜♪」演劇の時、関口さんが作ってくれた音楽が自然と口をついて、畑に合唱が響きます。気持ち良い秋が暮れていきます。
先に一仕事終えた2年生が、ぼそっと
「元気な芽が出るように、おまじないしてあげる。」
彼女の静かな祈りが、種に届きますように。
フランスの画家ミレーの絵が、目の前の風景と二重写になって脳裏に蘇ってきます。思わず私も畑の中で静かに手を合わせ、祈ってみたい衝動に駆られます。
広大な敷地の中の、たった2坪程度の僕らの野菜畑。柔らかい土の中には、種はもちろん、たくさんの想いや願いが詰まっています。それが、どう育っていくのか?
ますます今後が楽しみです。