見出し画像

【日々の記録】 琴線の 震えし昼の 音楽会

皆さん、こんにちは。
忙しない師走。日々の食糧の買い出しにスーパーに赴けば、そこはクリスマス一色。寂しいことに個人的にはクリスマスに何の楽しみもないけれど、漂う華やかな雰囲気にそれでも心が弾みます。「クリスマス関係なしの私ですら」ですから、「いわんや子どもたちをや」です。
二時間目のことです。学び舎中央にある本のひろばから、クリスマスソングを演奏する楽器の音色が聞こえてきます。
「え?なになに?」
クリスマスが大好きな児童たちです。放射状に伸びた学校の隅々で、すでに浮き足立っています。中には国語の授業なのにも関わらず、
「メーリさんの、ひっつーじ、ひっつうじぃー♪」
興奮のあまり、クリスマスとは無関係の歌でおだをあげる児童もいて、思わず笑ってしまいます。音源を辿って広場に足を進めると、三重奏が高い天井いっぱいにこだましています。コンサートの音慣らしってとこでしょうか。

音楽家の目の前で、音の重なりを楽しむ。贅沢な時間。

三時間目、「杜のピアノ三重奏団」の皆さんによる、特別コンサートが開催されました。杜のピアノ三重奏団の皆さんは、本日わざわざ仙台から、音楽の楽しさを届けにゆめの森にきてくださいました。児童生徒は抑えられない気持ちを胸に、広場に集合です。さて、どんな感動に出会えるのだろう。ワクワクします。
「それでは、杜のピアノ三重奏団の皆さんです!どうぞ!」
デザイナーの紹介に、タキシード、ドレスを身に纏ったメンバーの登場です。普段見慣れないゴージャスな洋装に感嘆の声が漏れます。
「皆さん、この楽器は何だか知っていますか?」
楽団メンバーの問いかけに、あちこちから手があがります。
「バイオリンにピアノ、そして、チェロ!」
「すごい!よく知っているね!」楽団メンバーが目を丸くします。
僭越ながら、皆さま。バイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバスの違いを説明できますか。えへん。私たちゆめの森メンバーは、先日お越しいただいたバイオリニスト嶋田さんのおかげで、しっかり予習済みなのです。楽団メンバーに褒められて、児童たちも鼻を高くしています。

あたし、知ってるよ!児童の博識に三重奏団の皆様もびっくり!

バッハにモンティ、そしてシベリウス。長い時間のフィルターをくぐり抜けた、クラシックの珠玉の名作が、校舎全体に響き渡ります。
クラシックなんて難しそう。そう毛嫌いする御仁もいらっしゃるかもしれません。しかし、そこは音楽の魅力の伝道師でもある「杜のピアノ三重奏団」の皆さんです。子供でも楽しめるよう様々な工夫をなさっています。テンポの早いバイオリン曲を歩きながら、時に児童の目線まで体を屈めて演奏してくれます。目の前で弦の上を目まぐるしく動く指に、今度は子どもたちが目を丸くします。

この真摯な眼差しを見よ!

名曲の後は、「イントロクイズ」です。
どこかで聞いたことのある音楽のイントロクイズに、われ先にと手があがります。
「答えは天空の城ラピュタの君を乗せて、です。」9年生の完璧な解答に大拍手です。次のクイズ、イントロを聞いて子どもたちから歓声があがります。
「知ってるー!」「あ、わかった!」「YOASOBIのアイドルでしょ!!」
ヨアソビ?アイドル?当方はさっぱりですが、子どもたちには大分馴染みの曲のようです。音楽団の皆さんが「アイドル」を弾き始めると、あちらこちらから曲に合わせて歌う声が聞こえています。思わず口ずさんでしまうほどの大人気の曲のようです。

「イントロクイズ。これは何の曲でしょーか?」
「知ってる!」競うように手が上がる。

最後のイントロクイズは・・。「これなんだ?」
「ドレミファソラシド ドシラソファミレド〜〜」
「あーー!」「わかった、わかった!」児童たちが一斉に声を上げます。
「じゃあ、答えをどうぞ!」
「ゆめの森の歌!!」みんな揃って答えます。
そうです。最後は、私たちの校歌「ゆめの森の歌」です。みんな立ち上がり、三重奏の伴奏で合唱です。みんなの紅潮した顔にこの学校に対する愛着、さらに言えば「愛校心」の萌芽を見るようで嬉しくなります。

もちろん答えは「ゆめの森の歌」!

あっという間の一時間。楽しく、贅沢な時間時間でした。
本日お越しくださった「杜のピアノ三重奏団」の皆様、この場をお借りして御礼申し上げます。本当にありがとうございました。

・・・いにしえの昔。文明が始まる頃。
巨石を動かそうと周囲にぐるりと取り付いた私たちの祖先から、悲鳴や呻きの代わりに歌が生まれ、自身を鼓舞した。生まれた歌の輪は徐々に大きくなり、谷にこだまし、途方も無い巨石を動かしめた・・・。
音楽の起源は諸説あり、今もはっきりしたことは解明されていないとのこと。しかし、過酷な労働の中で、皆の心が一つになった時、自然発生的に歌が生まれたのであろうという「労働起源説」。私のお気に入りのエピソードです。
音楽は習うものではなく、生まれるもの。音楽のジャンルに貴賎はありません。私たちが力を合わせ、何かを乗り越えようと奮闘する時、自然と歌が生まれ、真ん中に音楽があったのなら、どんなに心強いことでしょう。
学校の真ん中に本があり、音楽がある。私はそんなゆめの森が好きです。
私たちの未来の旅路で、どんな歌が生まれてくるのでしょうか。今からワクワクしています。