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【日々の記録】物語を全身で味わう

皆さん、こんにちは。
もう直ぐ12月。冬本番がやってきます。今日は風が少し強いものの、お日さまに恵まれ、暖かい1日になりました。青空の下、11月の風の中を半袖、短パンが駆け抜けていきます。室内からその様子を眺める私。「子供は風の子。大人は火の子。」古いことわざを思わず独りごちてしまいます。
さて、ゆめの森の暖かい室内をぐるりとめぐって見ましょう。

iPadで初めて聞く植物の名前を調べます。

1時間目、ゆめの森の真ん中から、小気味いい音読の声が聞こえてきます。
「えいやら、えいやら、えいやらや。」
思わず踊りたくなるようなリズムです。3年生の国語の時間「三年とうげ」の勉強です。「三年とうげ」はどんなところか、何が起こるか、内容を追いながら児童とデザイナーで句読点読み(マル読み 「。」まで読んで、次の人と交代する読み方)にチャレンジしています。初めて聞く語彙も多く、時々つっかえてしまう場面もあります。
「文を指でなぞりながら読んでごらん。」
デザイナーがアドバイスし、まずは正確に読んでいきます。
みんなで一回読み終えて、どうやら大意はつかんだようです。リズムよく、とんちの効いたお話は音読するともっと楽しくなります。3年生の二人はお話の楽しさを既に感じ取ったようで、音に合わせて体をくねくねさせています。

れんげつつじの美しさに息を呑む。

「秋には、かえで、がまずみ、ぬるでの葉。」
恥ずかしながら、私も初めて聞く植物の名前がたくさん出てきます。いまは昔、指に唾つけ、百科事典のページを手繰り手繰りしたしたものですが、現代っ子は、iPadという文明の利器を駆使して、調べていきます。鮮やかに画像として現れた筆リンドウや、れんげつつじの美しさに声をあげる二人。本文中にある「ため息の出るほど、よいながめ」をデジタルを媒介して味わえたようです。
デザイナーがここで問います。
「仕事が終わって、こんな景色の中でよっこいしょって、荷物おろして腰おろしたら、どうだろうね。」
問いかけに、やおら二人が立ち上がり、それから床に腰をおろし、あぐらを組んでいます。児童の一人は瞑目し、口を真っ直ぐ結んで、もの言いません。
「あれ、どうした?」
一人の呼びかけにも応じず、じっと目を瞑っています。しばらくそのまま話を聞いたていた児童。突然目を開き、にっこり一言。
「あー、綺麗だった!」
みんな大笑いです。どうやら彼女の心は、学校を離れ花咲く峠を飛んでいたようです。その後も、「跳ね起きる」や、「すってんころり」を二人して体全体を使って表現し、笑い転げています。次回は役になりきって劇みたいにやってみようということになりました。次の国語の時間が楽しみです。

「味わう」のは舌だけじゃない!

3年生の授業に参加して、改めておもいます。
「体全部で味わえば、物語はもっとおいしく面白くなる!」
確かに、多く語彙を覚え、正確に読み、要約し、正しく設問に解答を出すことも大切な勉強です。私ごとですが、その重要さは、受験期に身にしみているつもりです。ですが、今日の彼らのように、リズムいい文を舌で転がし、牛のように目を閉じ物語を反芻し、体を動かし、言葉を体で翻訳する。こんなふうに物語を味わうならば、「本」はより卑近なものになるはずです。「文学」なんて鯱張らず、桃にかぶりつく要領で世界を頬張れば、毎日がもっと豊になるのだな。そんなふうに感じた1時間でした。
デザイナーも児童もみんな、ただいま成長中。そんな1日が暮れていきます。


みんなにも読んでほしいですか?

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