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【日々の記録】しなやかな体の先に。

皆さん、こんにちは。
相変わらず厳しい寒さが続いております。
体を縮こませ学外に出れば、ちらほらと寒空の下、散歩に励む地域の方々と行き合います。
「おはようございます。」
気持ち良い挨拶を交わし、行き過ぎる颯爽とした背中を見送りつつ、私の悪弊でその後ろ姿と自身の怠惰とをつい比較してしまいます。
「最近、運動してないなぁ・・・。」ダブついたお腹を撫で、心の中で呟きます。
皆さまはいかがでしょう?
寒さを口実につい、ダラダラとおこたで丸くなっていませんか?

唐突のようですが、私は群馬県出身です。進学を機に上京しましたが、それまで群馬の高校で学びました。その高校の校是は「質実剛健」「堅忍持久」。昔かたぎの男子校です。校是とは別に「文武両道」のしかつめらしい文言が昇降口に掲げられていた事をおぼろに記憶しています。
「文武両道」「健全な肉体に健全な精神が宿る」。
そんな訓話を何回聞いた事でしょう・・。
学童期、これでもスポーツは得意な方でした。しかし成長するに連れ、苦手意識が高まりました。小さなお山の大将が、広い世界で権勢を失う。そんなところでしょう。
手の届かないブドウを「あれは酸っぱいぶどうだ。」と断じたイソップの狐のごとく私の合理化は進み、やがて「ねたみ」「そねみ」に変化しました。
「スポーツができたからって・・。」溌剌とした同級生を横目に嘯きました。
ひねくれていますね。
・・・なるほど、健全な肉体に健全な精神が宿るとは、言い得て妙です。スポーツから離れ、無精になった肉体にみごと不健全な精神が宿りました。

溌剌理学療法士 楠紳太郎さん(通称しんちゃん先生)

閑話休題
皆さま、「ロコモ」という言葉をご存知ですか?
ロコモとはロコモティブシンドロームのことで、2007年に日本整形外科学会が提唱した概念であり、年齢を重ねることによって筋力が低下したり、関節や脊椎などの病気を発症したりすることで運動器の機能が低下し、立ったり、歩いたりといった移動機能が低下した状態を指すと説明されています。
以前は高齢者の周辺にある語彙でしたが、ゲームやネットに代表される生活スタイルの変化で、昨今では「ロコモ」の子供も珍しくはないそうです。
そんな「ロコモ」を防ぐために、本日特別講師がご来校されました。
富岡にある「メディカルフィットネスリバース」の理学療法士、楠紳太郎さんです。楠さん指導の元、ロコモ防止のトレーニングを学びます。
「みなさん、よろしくお願いします!しんちゃん先生と呼んでください!」
爽やか好青年「しんちゃん」がご挨拶します。早速、
「しんちゃん?クレヨンしんちゃん!!」
予想通りに児童たちがやんやと混ぜ返します。
「最初にみんなの体の状態を一人一人チェックしますね。」としんちゃん。
ぎくり!さっと児童たちを緊張が包みます。
「だいじょうぶ!できないことは悪いことじゃありません。自分で自分の体の状態を知ることが大切なんですよ。」
にこやかなしんちゃん先生の言葉が、児童の緊張をほぐします。さあ、実践です。
片足でバランスを取ったり、体のいろいろな部位を動かして柔軟さをチェックします。

この立ち姿の美しさをみよ!
いてててて!大袈裟に騒いでみるのも楽しいがゆえ。

「まあ・・、みんなOKですね。」
先生に及第点を頂戴し、まずは一安心。
「では次に固くなった筋肉を伸ばしていきましょう。」
体育館には各自ヨガマットが敷かれ、柔軟体操が始まります。
「いてー!」「いてててて!」あちこちから悲鳴が上がります。しかし中には涼しい顔でぐにゃりと体を曲げる児童がいます。全体を俯瞰すると、概ねゆめの森児童は体が柔らかく、巻き起こる阿鼻叫喚は少々大袈裟な自己アピールのようです。
「どれどれ、」私も真似てやってみます。
「!」・・・なんと、児童たちの半分も曲がりません。
「やっぱり年齢とともに筋肉は固くなります。ですから、小学生のうちに柔らかくしておくことが大切なんです。」
しんちゃん先生の説明、特に「年齢とともに」がずしりと心に響きます。
柔軟の後は、体幹トレーニング、筋力トレーニングと続きます。
児童を監護する役割を忘れ、「年齢とともに」を払拭すべく私も奮闘します。久しぶりの腹筋に、声が今は亡き志村けんのようになり、それを児童が笑います。
「負けるもんか!おじさんだって!」
短時間ですが、体を動かしているうちに気持ちが前向きになってきます。「採れないブドウは酸っぱい」ではなく、「酸っぱいブドウであろうと、取ってやろう」。そんな気持ちの変化です。

それそれ、負けるな!がんばれ!大きな声援がこだまする。
なんかねぇ・・ここが伸びた感じがする・・。体に向き合い、体を感じる。

最後は大きなバランスボールをドリブルし、二つのグループでリレーを行います。子供たちが普段扱ったこともない大きなボールを体全体で弾ませ走ります。見守る仲間たちからも弾んだ声援が飛んできます。
器用な子。不器用な子。違いはありますが、一生懸命に差はありません。
・・ゆめの森で初めて出会った頃、できないことで腐って途中でゲームを放擲したり、失敗を恐れるあまり挑戦を避ける児童の姿もありました。しかし、今日のこの時間、そんな姿勢は全く見られません。
「ほうら、がんばれ、がんばれ!」
児童に負けじと大声で声援を送りながら、私の心は静かな感慨に満ちていきます・・・。
二つのチームのタイムの差は、3秒。勝ったチームも負けたチームも互いの健闘を称え合います。・・・この光景も少なくとも半年前には見られませんでした。勝ったチームは相手を煽り、負けたチームは泣いて不貞腐れる。そんな光景を度々目にしたものです。しかし、見よ!目の前のこの健やかな児童たちの姿を・・。
水面に波紋が広がるように、静かな感慨が再び私を襲います。

むずかしい、けど、やめないよ。楽しんだもん。

「はい集合!」
しんちゃんの声で我に帰れば、もう時間です。
「今日はみんな本当によく頑張りました。筋肉はこれからどんどん大きくなります。力もどんどん強くなる。でも柔らかさ、しなやかさは小学生が一番伸びます。ぜひお家でも少し今日練習した運動をやってみてください。」
しんちゃん先生からメッセージをいただきハイタッチで解散です。中には名残惜しそうにしんちゃん先生の腰に縋り付く児童もいます。今日の楽しさ、そして思わぬ発見に私まで縋りつきたい気持ちになります。しかし、そこは自制して。
しんちゃん先生、本当にありがとうございました!

ゲームを織り交ぜ「学んで遊ぶ45分」

スポーツができる人を妬んで嫉んで時は過ぎ、私は演劇に出会いました。
そこで身体性の重要さを思い知りました。精神と肉体は密接に繋がっていて、頭でっかちに理解しても、身体性が伴わなければ表現は磨かれません。
健全かどうかは別としても、精神に肉体が宿り、肉体に精神が宿ることを諒解しました。カッコつければ唯心論からの脱却とも言いましょうか。(よく知らんけど)
小難しい話は横に置いて、今日、体を動かすことで、気持ちが上向いた事実こそ、上の言葉の意味するところは簡単に説明できそうです。
最近とみに固くなった私の心。このnoteでの昔語りの多さもそれを示しています。
まず、私のレジリエンスを取り戻すには、四角張った書籍を手繰る以上に、毎日の柔軟体操が有効のようです。
「しなやかな体に、しなやかな心が宿る。」
日々成長する児童たちの在り方と、想像以上に柔らかい彼らの体。二つはやはり繋がっている・・。上の文言を一筆揮毫し、過去の自分にも贈呈したくなりました。

みんなにも読んでほしいですか?

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