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【日々の記録】風と遊び、風に学ぶ。

皆さん、こんにちは。
インフルエンザが猖獗を極めております。
このnoteをご覧の皆さま、体調はいかがですか?
ここゆめの森でも子どもたちだけではなく、教職員にも欠席が目立ってきました。
小さなことですが、手洗い、うがいを心がけ、十分に休養をとり、くれぐれもご自愛くださいませ。

ほうら、ついてこい!

 さて冒頭、カゼの話題で始まりましたが、次もカゼの話題です。カゼ(風邪)ではなく、カゼ(風)のお話です。
10月に上演されたゆめの森演劇「きおくの森」では、「風」のモチーフが繰り返し変調され登場しました。「青と青がぶつかって、切なくなって風になる・・。」
どこかで生まれ、どこかに吹き抜けていく風。天気図などでは矢羽根で書き示されたりもしますが、風を感じることはできても、実際に風を見る事は叶いません。
「東風」「木枯らし」「薫風」。風には2000を超える呼び名があるそうですが、目に見えぬものに多くの名前を授けた先人の感性に、改めて畏敬の念を感じます。
さあ、本日の1・2年生の活動です。
テーマは、「風と遊ぼう。」
相変わらず、今日もゆめの森の校庭には風が吹き荒れています。海から吹き寄せる風か、山から吹き下ろす風か、来し方はわかりませんが、体を芯から冷やす強い風です。懐手して暖かい室内で過ごすのも悪くないですが、風を感じ、風と仲良くするのも一興です。では早速活動をのぞいてみましょう。

みて!風でパンパン。

昇降口で一年生が誘ってくれます。
「ねえ、早く来てよ。たこ作って遊ぶんだから。」
ん?凧?ははん、お正月の遊びか。でも凧作りはなかなか難しいぞ。竹ひごを切り、凧糸で骨を組み、風を受けるように反りをつけてと、古い記憶を手繰ります。「あ、上がった上がった!」
靴を履き替え表に出ると、歓声が風に乗ってやってきます。おや、もう完成したのかと思い眺めれば、ビニール袋を手に子どもたちが走り回っています。どうやらしっかりとした凧ではなく、ビニール袋を使った簡易凧のようです。両手でビニール袋の口を広げ、くるくる回ると自ずと風が袋に飛び込んできます。
「みて、いっぱい捕まえたよ!」
膨らんだビニール袋を手に得意満面の表情です。パンパンに風に詰め込むことに成功した児童もいれば、口を閉じる際に風を逃し悔しがる児童もいます。上手にできない一年生は二年生に助けを求め、できるだけたくさんの風を捉えようと奮闘しています。しばしの協働作業の結果、全員が袋にいっぱい風を捕まえることに成功したようです。風を飲みこみ丸々とビニール袋が膨れています。今度はビニール紐をくくり付け持ち手をこさえます。テープを引き出す係、それをハサミで切る係、ガムテープでくっつける係と自然と役割分担が生まれ、順調に作業が進んでいきます。

風の詰まった袋に顔を書いてみる。どんな顔かな?

「できた!」
ただ空気を入れたゴミ袋に、ビニール紐をくつけただけの粗末な凧かもしれませんが、目に見えぬ風を可視化し、十分に感じることに成功したようです。皆思い思いに自身の成果物を引き回し得意げです。
「みて、犬の散歩だよ。」
ふわりと浮いた袋を、犬に見立て、児童たちが風にふかれ、あちらにもこちらと飛び回っています。
・・・風だ。風の化身だ。まるで目に見えぬ風が、子どもの形を借りて顕現したようです。
風をつかまえ、風を感じ、風に乗った児童は、次なる「風のおもちゃ」作りに挑戦です。5時間目レベルアップ授業の時間です。創作工房に集まった子どもたちの前にそれぞれ紙コップが置かれています。お茶でも飲みながらの作戦会議かと思いきや、「違うよ。ここに座ってみててね。」
大人びた顔して、私に指示を出してきます。どうやら、今度は風車作りに挑戦するようです。
「最初にね、コップの底に好きな色で色を塗るの。好きな色は?」
青と答えれば、優しい児童が青と水色のペンを差し出してくれます。どうやら、一度取り組んだ経験があるようで、皆したり顔で未経験の私に教えてくれます。
「それが終わったらねぇ、ここに好きな絵を描くの。」
次にコップの側面に自由に絵を描いていきます。青い空と海の連想か、大きな鯨を描く子がいます。彼女の脳裏には風を受け回転する羽車と、泰然と大海を泳ぐ鯨のイメージが重なったのでしょう。おっとりとした鯨が、コップの側面で柔和に笑っています。
「そしたら、こうやって切っていくの。」
「僕のハサミ使っていいよ。」
それから絵の描かれた紙コップを放射状に切っていきます。太い方がよく回るだとか、細い方がいいとか、それぞれの研究結果を持ち寄っての侃侃諤諤です。
コップを花のように切り終わったら、コップ底の中心を割り箸の先端に画鋲で止めて完成です。
「できた。」「ほらみて!すごいでしょう!」

空に飛んでいってしまいそう。

色とりどりの風車を手に、吐き出し窓を細く開けます。
「うわー!」「すげー!」「ねえ、みてみて!」
隙間から吹き込む風を受け、風車が一斉に勢いよく回り出します。想像以上の速さです。そのスピードに私まで感嘆の声が漏れてしまいます。鯨も回転の中で正体を失い、青一色に染まっています。風車同様に子どもたちの表情まで驚きと感動でクルクル忙しく回ります。赤や黄色に緑。子どもを取り巻く周辺の空気までもが鮮やかに色付いて見えるようです。冷たく強い風が、彼らに打ち当たり、そこで溶け、楽しく暖かいものに変わっていく・・。うん、そう、風に色を塗りつけている。そんな表現がしっくり来ます。風車から迸った色が辺りを染めているようです。
・・「風の化身」。先ほどの感情が澎湃と湧き起こってきます。
「なるほど。つまり子どもは、風なんだな・・。」
自分でもよくわからないことを、なんだか独りごちて、うんうんと頷いてしまいました。

風は友達!

ディズニーアニメ「ポカホンタス」の歌の中に「風の色で絵が描ける?」という歌詞があり、私のお気に入りの一つです。「きおくの森」の中にも、一部引用してしまうほど素敵なフレーズです。
「風の色で絵が描ける?」理に則って答えれば、「N O!」です。風は気象学的に説明すれば地面と水平方向に流れる大気のこと。大気に色はありません。しかし、風に色を感じるような感性をいつまでも磨いていきたい、そう思います。
かつて土に根差し、天を恐れ、風に2000もの名前を授けた我らの祖先。果たして非科学的と一笑に伏すことができるのでしょうか。心の目を見開けば、そこには豊な知見が躍動しています。
無数の風を感じ分け、風の色を自由に思い描くことも十分科学的な知的遊戯と言えそうです。理知的な思考も、情緒的な発想も優劣なく大切にすることで、まだ見えない何かが立ち現れてくる・・。風に吹かれてそう思いました。


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